2017年「積水ハウス地面師詐欺」について

企業をターゲットにした積水ハウス地面師詐欺事件

積水ハウス地面師詐欺事件は、2017年6月に発生した、土地の購入を巡る詐欺事件です。
犯人は複数の詐欺師で構成された地面師グループで、被害者は積水ハウスでした。

地面師という言葉をご存じでしょうか?
地面師とは土地の売買を専門にする詐欺師で、他人の土地をあたかも自分が所有しいるように偽って、その土地を購入させその代金をだまし取るのが手口です。

積水ハウス地面師詐欺事件とは?

積水ハウスも、地面師グループの手口にまんまとハマってしまいました。
詐欺の舞台となったのは東京都品川区にあった旅館「海喜館」の跡地で、約600坪の広さがありました。
積水ハウスは、この土地を約70億円で売ると持ちかけられたのです。
当時は100億円の資産価値があるとして、業界でも注目されていた好立地です。
積水ハウスは分譲マンションの建設地として最適だと考え、この土地の購入を急ぎました。

事件のきっかけは、積水ハウスの土地購入担当者が、土地ブローカーと知り合い、ブローカーから「海喜館」跡地の所有者と名乗る女性を紹介されたことです。
もちろんその女性は本当の持ち主ではなく、所有者になりすました地面師グループの一味です。
女性は身分証明書として偽のパスポートを提示しており、土地の権利証も原本ではなくコピーが使われていました。

権利証などの確認が十分に行われないまま、社長の判断で土地の売買契約が進められていきます。
この間に、本当の所有者から「売買契約を交わしていない」旨の郵便が内容証明で送られてきましたが、積水ハウスは「怪文書」としてそれを無視しました。
社内外から不審に思う意見が出ましたが、社長らはそれらの意見を取り入れず代金支払いを決めたのです。

本来なら、このような大きな取り引きは慎重に検討し、役員全員の承認を得た上で行われるべきです。
しかし、それらの検討が十分に行われないまま、社長など一部の経営陣が独断で取り引きを決定したため、社内では「社長案件」と呼ばれていたとのことです。

積水ハウスは代金を支払った後、法務局に仮登記申請を行いました。
しかし、「海喜館」の跡地は都内に住む男性2人が所有権を取得していたため、法務局は積水ハウスの申請を認めませんでした。
これによって、所有者と名乗った女性が偽物であったことが発覚し、詐欺事件が明るみに出たのです。
被害額は約55億円といわれています。

当時の社長と副社長が充分な検討を行わずに売買を承認したために詐欺被害が起こったとして、株主が訴訟を起こし、被害額を会社に支払うよう求めました。
しかし、裁判所は株主側の訴えを棄却しています。
一方、地面師グループ10人は逮捕され、主犯と見なされる男性に懲役11年が言い渡されるなど有罪判決を受けています。
また、積水ハウスは犯人側に10億円の損害賠償を求め、裁判所は支払いを命じました。