2014~2020年「第一生命多額詐取事件」について

「第一生命多額詐欺事件」とは?

銀行員の横領事件など、大規模な詐欺事件は後を絶ちませんが、その中でも世間を震撼させたのが「第一生命多額詐欺事件」です。

2002年から2020年まで第一生命に勤務していた女性社員(現在は退職)が担当する顧客24人に対し、現金を預けるよう持ち掛け、資金を持ち逃げしたというのが事件の概要になります。
この女性社員は顧客に対して「特別な投資枠がある」などと持ち掛けて現金を預けさせたうえ、その手口を約6年にわたって繰り返してきましたが、彼女の業績を不審に思った外部からの告発により事件が露見することになりました。

事件発覚後、女性社員は詐欺罪で告発されたうえに法廷で賠償責任を追及されましたが、その時点で彼女に返済能力はほとんど残されておらず、被害者への賠償の目途は今なおもたっていないのが現状です。

事件が起きた心理的背景

なぜ、「第一生命多額詐欺事件」のような詐欺が成立してしまったのでしょうか。
心理学的に検証していきましょう。

この事件のポイントは「特別」というところです。
女性社員は24人の顧客ひとりひとりに対し、「あなただけ……」という言葉を使って誘導し、現金を預けるように仕向けています。
人間は本質的に「特別」という言葉に弱く、たとえ根拠が薄くても「あなたにだけ教えます」などと言われるとついつい信じてしまいます。

さらに意識したいのが「ハロー効果」です。
ハローとはもともと後光を表し、それが転じて、肩書きや権威、ステータスを表すようになりました。
この詐欺事件の場合、女性社員は第一生命の社内でもトップクラスの業績を誇り、事件当時でもかなりのベテランでした。

キャリア、実績ともに充分な社員によって話の信憑性が増し、顧客のほうもついつい「この人が言うなら信頼できる」と思い込んでしまったのではないでしょうか。

告訴と告発の違いとは?

「第一生命多額詐欺事件」は被害者の告訴ではなく、外部告発によって露見しました。
告訴と告発はよく似ているようですが、意味はまったく違います。

告訴は直接の被害者がみずからの意志で被害を訴え出ることですが、告発は事件を察知した外部の人間が事件として露見させることを表します。

つまり、告訴と告発では訴え出る主体が異なり、その後の訴訟手続きも変わってきます。
この種の事件を検証する場合は、告訴と告発の違いにも注意しましょう。

肩書きには要注意!

現役の社員が担当顧客の資金を持ち逃げしたという「第一生命多額詐欺事件」。
訴えられた女性社員はすでに高齢ということもあり、顧客への賠償の目途は未だに立っていません。

皆さんも、特別、優遇などという、人間心理のスキを突いた詐欺事件には充分注意し、肩書きや社会的ステータスを安易に信用しないようにしましょう。