2014年「東京電力賠償金詐取事件」について

東京電力賠償金詐取事件の概要

東京電力賠償金詐取事件とは、東日本大震災後の福島第一原発での事故の影響を受けて、売上が落ちたという理由で飲食店に虚偽の請求をさせ、東京電力から多額の賠償金を騙し取ったという事件です。
2012年ごろからこのような手口で詐欺事件を働いたかどで、2019年10月に札幌市豊平区に住む無職の男を始め男女9人が逮捕されました。
さらに、11月には新たな容疑で男女10年が再逮捕されました。

東京電力賠償金詐取事件の顛末

警視庁への取材によると、具体的な逮捕容疑は、福島県いわき市にて営む飲食店の売上が原発事故の影響で著しく下がったとして、損害賠償金を請求する書類を作成し1000万円以上を騙し取ったことに関することです。
ところが、警察の調べに主犯格の男は黙秘しており、同時に逮捕されたうちの数人も否認しています。

しかし、捜査が進むうちにさまざまなことが明らかになりました。
まず主犯格の容疑者は、別の詐欺事件で服役中の元NPO法人の職員の男と深い関係があります。
そのNPO法人とは、今回の事故のような賠償問題において賠償金の請求を代行するという団体です。
その団体の職員を務めていた男のグループで、今回の事件の主犯格の男は幹部を務めていたとされています。

彼はその後独立し、福島県いわき市を拠点にして活動を始めたということです。
さらにその後いわき市内の飲食業者およそ20人に賠償金を請求するよう促し、合計5億円近くを東京電力に払わせ、そのうちの80~90%を手数料として懐に入れていました。

具体的な手口は、まずリクルーターの役割を務める女がスナックの経営者などに近づき、「お店をやっていたのなら東電に賠償金請求ができるから申請しないか?」と持ちかけます。
書類の作成も経営者に代わって行い、その際、現実とはまったく異なる売上を記入し、実際よりも大きな売上があったかのように見せかけて巨額の賠償金を請求したわけです。
経営者自身は申請手続きについてよく知らず、書類をどう書けばよいかもわからなかったとのことで、気がついた時には後に引けなくなったと語っています。
そこにつけ込んだ悪質な犯罪と言えるでしょう。

このような架空の請求に対して、東京電力はなぜ素直に応じたのかも疑問ですが、元東電社員の話によると申請内容を詳しくチェックするような余裕がなかったとのことです。
それに加え東電は加害者という意識があったため、被害者に対する負い目もあり、形式の整った書類で申請されれば支払わざるを得なかったと語っています。

この事件は東京電力が直接の被害者に見えますが、実際は電力料金を負担する一般の人たちが被害者と言えます。
復興のために電気料金の値上げや税金に応じている人たちの思いを踏みにじる詐欺事件と言えるでしょう。